糖尿病と足の病気
江草玄士クリニックは2000年に広島市中区八丁堀で開院して以来、糖尿病や動脈硬化などの専門的な診療を続けてまいりました。私たちは、糖尿病の患者さんが直面する深刻な合併症の一つである「足の病気(足病変)」の予防と早期発見に特に力を入れています。糖尿病になると、痛みを感じにくくなったり血流が悪くなったりすることで、小さな傷が命取りになることがあります。当院では日本糖尿病学会の専門医および研修指導医である院長が、長年の臨床経験に基づき、患者さん一人ひとりの足の健康を守るための丁寧なサポートを心がけています。広電八丁堀駅から徒歩5分という立地を活かし、地域の皆様が気軽に相談できる環境を整えております。糖尿病による足の不安を解消し、いつまでもご自身の足で歩き続けられるよう、私たちと一緒に取り組んでいきましょう。
糖尿病と足の病気の症状について
糖尿病による足の病気は、初期段階では自覚症状が乏しいことが大きな特徴です。患者さんが異変に気づいたときには、すでに症状が進行していることも少なくありません。日頃からご自身の足をよく観察し、以下のようなサインがないか確認することが重要です。
感覚の変化に関する症状
糖尿病の合併症によって神経に支障が出ると、足の感覚に独特の変化が現れます。これらは足の病気が始まる重要なサインです。
- 足の先がピリピリ、ジンジンとしびれるような感じがする
- 足の裏に紙が張り付いているような違和感がある
- 痛みや熱さ、冷たさを以前よりも感じにくくなった
- 夜間に足がうずいたり、何もしなくても痛みを感じたりする
見た目や質感の変化に関する症状
血行が悪くなったり、自律神経の働きが低下したりすることで、足の見た目にも変化が現れます。特に足の色や皮膚の状態に注目してください。
- 足の色が紫色(チアノーゼ - 血流が悪く酸素が不足した状態)に見える
- 常に足が冷たく、触ると氷のように感じる
- 皮膚が異常に乾燥し、ひび割れや皮剥けが目立つ
- 胼胝(タコ)や鶏眼(魚の目)が同じ場所に何度もできる
これらの症状が一つでも当てはまる場合は、早めの受診をお勧めいたします。詳しい症状のチェックについては「糖尿病の症状 まとめ」のページも併せてご覧ください。
糖尿病と足の病気の原因について
なぜ糖尿病になると足にトラブルが起きやすくなるのでしょうか。それには糖尿病特有の「3つの大きな要因」が複雑に絡み合っています。これらが重なることで、足の傷が治りにくくなり、最悪の場合は壊疽(えそ - 組織が腐ってしまうこと)に至るリスク因子となります。
末梢神経障害
血糖値が高い状態が続くと、足の先まで伸びている神経がダメージを受けます。これを末梢神経障害と呼びます。痛みを感じるセンサーが鈍くなるため、靴擦れや深爪、火傷などの怪我をしても気づかずに放置してしまいがちです。知らないうちに傷が悪化してしまうことが最大の危険です。
末梢血管障害(血行障害)
糖尿病は動脈硬化を進行させます。特に膝から下の細い血管が詰まりやすくなり、足に十分な酸素や栄養が届かなくなります。これを末梢血管障害と呼びます。栄養が届かない足の組織は脆くなっており、一度傷ができると修復が追いつかず、なかなか治りません。動脈硬化の詳しい仕組みについては「動脈硬化について」のページを参照してください。
免疫力の低下と感染症
高血糖の状態では、細菌と戦う白血球の機能が低下し、全身の免疫力が弱まります。健康な人なら自然に治るような小さな傷口から細菌が侵入し、一気に繁殖して膿んでしまうことがあります。特に足白癬(水虫)がある方は、そこが細菌の入り口になるため注意が必要です。皮膚のトラブルについては「糖尿病と皮膚の病気」のページで詳しく解説しています。
糖尿病と足の病気の種類について
糖尿病の足病変は、原因や状態によっていくつかのタイプに分けられます。私たちは治療方針を決定する際に、寺師浩人先生が提唱された「神戸分類」という非常に分かりやすい基準を指標としています。
(引用 - 糖尿病フットケアupdate 寺師浩人ほか)
Type 1 - 末梢神経障害型
神経のダメージが主原因となるタイプです。感覚が鈍いため、胼胝(タコ)の下に潰瘍(深い治りにくい傷)ができていることに気づかない症例が多く見られます。定期的なフットケアで、傷ができる前にタコや爪の処置を行うことが早期治療の鍵となります。
知覚鈍麻により、気が付かないうちに大きなタコが形成されてしまったケースです。
Type 2 - 血行障害型
足の指先などの細い血管が詰まってしまうタイプです。足の冷えや痛み、歩くと足が痛くなる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」などの症状が出ます。進行すると指先が黒くなる壊疽を起こすことがあり、カテーテル治療やバイパス術が必要になることもあります。
末梢の血行不全により、足の指に壊死(えし)が生じてしまった症例です。
Type 3 - 感染型
傷口からの細菌感染が主原因です。糖尿病の方は感染が進みやすく、筋肉や骨にまで炎症が及ぶ「骨髄炎」になると非常に予後(その後の経過)が厳しくなります。抗生剤が効きにくい深部組織の感染では、悪くなった部分を切除するデブリードマンという処置が必要になります。
水虫などから細菌が侵入し、激しい炎症を起こしてしまった症例です。
Type 4 - 血行障害 + 感染型(混合型)
血行が悪いうえに感染も併発している、最も治療が難しい状態です。感染を抑える治療と、血流を再開させる治療の両方を適切なタイミングで行わなければなりません。当院では必要に応じて市内総合病院の専門医と密に連携し、迅速に対応できる環境を整えています。
血行不良に伴う壊死と広範囲の感染を同時に認めた、非常に重篤な症例です。
糖尿病と足の病気の治療法について
当院での治療アプローチは、単に傷を治すだけでなく、「足の切断を防ぎ、歩ける状態を維持すること」を最優先としています。そのためには、全身の状態管理と足の局所処置の両面から進めていく必要があります。
厳格な血糖コントロール
足の病気を治す、あるいは予防するための大前提は、血糖値を良好な範囲に保つことです。特にHbA1cが8パーセントを超えると足病変のリスクが急増すると言われています。私たちは生活習慣の改善とともに、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な薬剤を処方し、治療の継続をサポートします。糖尿病の基本治療については「糖尿病について」のページをご覧ください。
専門的なフットケアと観察
当院では外来にて定期的な足の診察を行っています。ご自身では見えにくい足の裏や指の間を私たちがしっかりチェックし、早期発見に努めます。
- 胼胝(タコ)や鶏眼(魚の目)の適切な削り処置
- 厚くなった爪や変形した爪のケア
- 白癬(水虫)の積極的な治療
- ご自宅でのセルフチェック方法の指導
装具・靴の選定(専門職との連携)
足に合わない靴を履き続けることが、タコや傷の原因になっているケースが非常に多く見られます。当院では装具技師と連携し、患者さんの足の形に合わせたオーダーメイドのインソールや靴の作成を行っています。これにより、足への過度な圧力を分散させ、新たな傷ができるのを防ぎます。足の負担を減らすことは、将来的な歩行機能を守るために極めて重要です。
糖尿病と足の病気についてのよくある質問
Q1. なぜ水虫を放置してはいけないのですか?
A1. 糖尿病の方は免疫力が低下しているため、水虫による皮膚の小さなめくれから細菌が入り込み、足全体が赤く腫れ上がる蜂窩織炎(ほうかしきえん)や、さらに深い組織の感染を引き起こす危険があるからです。
Q2. 毎日足を洗っていれば、傷に気づかなくても大丈夫ですか?
A2. 洗うだけでは不十分です。糖尿病による神経障害があると、大きな傷があっても痛みを感じないことが多いため、必ず「目で見て」傷や赤み、腫れがないかを確認してください。視力が低下している方は、ご家族に協力してもらうか、手鏡を使うのが有効です。
Q3. タコが痛むので自分で削ってもいいですか?
A3. ご自身で削ることは絶対にお控えください。市販の削り器や薬品で皮膚を傷つけてしまい、そこから感染を起こして重症化するケースを私たちは数多く見てきました。タコの処置は、必ず医療機関で行うようにしてください。
Q4. HbA1cがいくつくらいなら足の病気は安心ですか?
A4. 一般的にはHbA1cを7パーセント未満に保つことが目標ですが、足病変のリスクを特に下げるには8パーセント未満を維持することが重要とされています。ただし、数値が良くても神経障害が進んでいる場合は注意が必要ですので、定期的な診察を欠かさないでください。
院長より
広島市中区の江草玄士クリニックでは、開院以来、糖尿病患者さんの「足」を非常に大切に考えてきました。糖尿病足病変は、一度悪化してしまうと治療に長い時間を要し、患者さんの生活の質(QOL)を大きく損なってしまいます。しかし、適切な血糖コントロールと日々のちょっとした注意があれば、その多くは予防することが可能です。私は広島大学病院時代から数多くの症例を診てまいりましたが、その経験から言えるのは、早期発見と治療の継続こそが、大切な足を救う唯一の道であるということです。
当院は糖尿病の専門医・研修指導医として、エビデンス(科学的根拠)に基づいた医療を提供するとともに、形成外科の専門家とも密に連携しています。足にタコができた、爪が切りにくい、なんとなく違和感がある。そんな些細なことでも構いません。八丁堀の当クリニックへお気軽にご相談ください。患者さんが寛解(症状が落ち着いた状態)を維持し、ずっと元気に歩き続けられるよう、私たちが全力でサポートいたします。重症化して後悔する前に、まずは一歩を踏み出して、私たちに足を見せてください。あなたの大切な足を一緒に守っていきましょう。
