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糖尿病と足の病気

糖尿病は世界的に増加の傾向をたどり、海外では糖尿病足病変の予防と対策も重要視されております。

諸外国での糖尿病足病変の年間発症率は約3%ですが、日本での年間発症率は約0.3%と海外の1/10程度です。

しかし、糖尿病足病変は難治性病変であり、切断などに至れば死亡率も高くなる侮れない疾患です。

最近では糖尿病による足壊疽といったことがメディアを通じて広がり、国内でも啓蒙活動が積極的に行われるようになりました。それでも欧米などに比べると十分な足病変医療が供給できていおりません。

欧米では足病医という専門家が存在しますが、国内では整形外科、形成外科、皮膚科などがその対応を行っております。

足病変の原因は神経障害、血管障害、感染症の3つに大別され、何が原因かでその治療方針を決定していきます。

特に寺師浩人先生が提唱する神戸分類が分かりやすく、治療方針の決定に用いております。以下に4つの分類について解説を行っております。

 

     (神戸分類 寺師浩人ほか 糖尿病フットケアupdateより引用)

 

TypeⅠ:末梢神経障害

神経障害は糖尿病の合併症としても有名ですが、神経障害があることで足の怪我や傷に気が付かず知らないうちに潰瘍(深い治りにくい傷)になっているということがあります。この段階では糖尿病のコントロールと定期的なフットケアで傷ができるのを防ぐことが重要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

末梢神経障害にて知覚鈍麻、気が付かないうちに胼胝が形成されていた症例

TypeⅡ:血行障害

閉塞性動脈硬化症と病態としては近いですが、より末梢の足の指の血管障害によって起こる症状です。特に足の指の血管や陰茎の血管は細く、動脈硬化などの影響を受けやすいとされています。下腿の足の血行は3本の血管によて栄養されており、後脛骨動脈という下腿の後面から足底の血行を支配する血管が重要になります。末梢血管障害を認めると指先の色調が紫色(チアノーゼという)になったり、足が冷たく感じる、安静にしていても足が痛いなどといった症状を認めます。進行すると足の指先から黒く変化し、いわゆる足壊疽を起こすこともあります。閉塞性動脈硬化症のようにより中枢の太い血管が狭窄する場合には間欠性跛行といって休み休みしか歩けないような症状が出現することがあります。治療法としては血管を拡張するお薬を使用したり、進行例ではカテーテルを用いた経皮的血管拡張術、血管の新しい通り道を作るバイパス術などの治療が必要になります。そのため症状の進行度合いによっては循環器内科や血管外科の医師たちの協力が必要になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

末梢の血行障害を来し、足趾の壊死を来した症例

*血管造影CTでは動脈の石灰化、末梢血管の途絶を認める

 

TypeⅢ:感染

小さい傷から細菌感染を来した状態です。抗生剤の投与や安静で軽快することもありますが、感染が深部組織(筋肉、腱、骨など)まで及んでしまうと外科的に感染した組織を切除する手術が必要になります。これは深部の組織には十分な血行がないため抗生剤が効きにくいといった点から虫歯の治療のように悪くなった部分を切除する必要があるからです。特に骨に炎症が及ぶ骨髄炎になると治療に苦渋し、足の切断に至ることがあります。糖尿病がある方は足の感覚が鈍くなっており、既に足の裏に大きな傷ができていることもあります。そこから細菌が侵入し、気が付かないうちに蜂窩織炎などの皮膚感染症を起こしていることが多くあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左第Ⅱ趾より感染(白癬あり)を認めた。複数回デブリードマン(感染した組織の除去)を行うも最終的には切断に至った症例

 

 

 

MRI(T2 STIR)にて骨髄炎の診断が行え、非常に有用である。写真は中足骨が骨髄炎になっている状態を示し、上の写真のように最終的にはリスフラン関節での切断に至った。

 

 

 

 

TypeⅣ:血行障害+感染

感染と血行障害を合併した状態で一番治療に苦渋します。感染が先行して末梢の弱った血管が潰れてしまい血行障害を起こすといった病態です。TypeⅡと同様に血行再建を必要としますが、血行が改善することで残存した細菌感染が一気に悪化することがあります。そのため血行再建を行ってから適切なタイミングで感染組織を切除する手術が必要となります。複合的な治療を要するため総合病院など規模の大きな総合病院での対応が必要になります。また、足に白癬(水虫)があると感染のリスクが高くなるため、糖尿病がある場合には積極的に白癬の治療を行うことをお勧めします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左第4足趾の血行不良に伴う壊死と広範囲の感染を合併した症例

糖尿病による足の病気は予防が重要です。

糖尿病の足病変は独立した疾患ではなく、糖尿病によって引き起こされる3大合併症が大きく関連しております。

神経障害が起こると足の知覚が鈍くなり、痛みなども感じにくくなります。そのため足に傷ができても気が付かず放置されて知らない間に感染も合併するという事態が発生します。

糖尿病による網膜症の影響で視力低下が起こり、自分の足の状態が観察しにくくなることも原因です。

糖尿病性腎症になり透析になると末梢の血管もますます脆くなり、血行障害を起こす可能性が高くなります。

特にHbA1cが8%以上で足病変のリスクが高くなるといわれており、該当する方は定期的な足の観察を行うことをすすめております。

足病変はまず予防が重要です。当院では糖尿病内科医と形成外科医が連携することで足の健康を守ることを目的にしております。

外来では定期的な足の診察やフットケアを行い、早期から足の健康を理解して頂くことで足病変の予防を目的にしております。

また足に合っていない靴を着用されている方が非常に多く、胼胝(タコ)や鶏眼(魚の目)が出来ている方を非常に多くお見掛け致します。

タコや魚の目をご自身で削ることで小さな傷ができ、そこから細菌感染を起こしているようなケースも見かけるため注意が必要です。

当院では装具技師と連携し、ご自身にあったインソールや靴を作成することでタコや魚の目、傷が出来にくいようにすることで足の健康寿命を伸ばすことを目的としております。

*文責 江草豪(形成外科専門医)

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