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糖尿病と皮膚の病気

糖尿病がある方は皮膚のかゆみが生じやすい

糖尿病があると上半身での発汗は増加し、下半身での発汗が減少することが指摘されています。これは全身の血糖が高くなることで多尿になり体内が脱水傾向になり皮膚が乾燥しやすくなること、さらに自律神経障害によって発汗作用が低下するため皮脂が欠乏する皮脂欠乏性湿疹によってかゆみが生じやすいと考えれられています。そのため冬場を中心とした保湿剤の使用をすすめており、場合によってはかゆみ止めの効果が高いステロイド外用剤やかゆみ止め(抗アレルギー剤)の内服併用も行います。逆に適切なケアを行わず、かゆみを我慢できずに引っかき続けると色素沈着により皮膚の色が黒ずんでしまうことがあります。そのためなるべく強い刺激は与えずに早い段階で皮膚のケアを行っていくことが重要です。皮膚のかゆみはその他肝臓の疾患、血液の疾患の影響でも認められることがあるため合併症の確認をすることも重要です。

糖尿病があると感染症を発症しやすい

糖尿病があると免疫機構が低下し、感染症を起こしやすくなります。水虫をはじめ、細菌感染を主体とした蜂窩織炎や壊死性筋膜炎などの皮膚感染症を発症しやすくなります。特に足は小さな傷から細菌感染などを起こすことがあるため日常からケアをしたり、血糖値を改善することが重要になります。また、ウイルスによる感染の発症リスクも高くなり、ヘルペスや帯状疱疹などにかかりやすいといわれております。

写真は基礎疾患に糖尿病があり皮膚感染症(蜂窩織炎)を発症した症例。安静と抗生剤投与にて治療した。

糖尿病があると水虫になりやすい(通常の2倍程度のリスク)

水虫(白癬という)は命に関わることはないと思われておりますが、水虫によって皮膚が脆くなりそこに傷ができて別の細菌が感染し蜂窩織炎(皮膚の感染症)になることがあります。特に糖尿病があると細菌感染の可能性が高くなり、足に腫れや赤みが出てきた場合には抗生剤での治療が必要になることがあります。そのため“たかが水虫”とは思わずに疑わしいときは早めの治療を行うことが重要になります。水虫は外用剤で改善することがほとんどですが、踵を中心とした水虫や爪水虫となると治りにくいため飲み薬を使用することがあります。普段から足をきれいに石鹸で洗うことやスリッパ・足ふきマットを清潔にすることも大切です。水虫は同居しているご家族にも移してしまうことがあるためその点においても治療が必要です。

 

糖尿病と爪

糖尿病があると爪にも変化が認められることがあります。爪の水虫になると爪が混濁し、分厚く、もろもろと脆い爪に変化してしまいます。他にも爪甲層状分裂といって爪がガタガタと二重になるような変化も認められます。また、糖尿病による血行障害が出てくると足の指の毛がなくなり光沢を帯び、爪が伸びにくく分厚く変化し黄色を呈してくることがあります。爪は糖尿病だけでなく様々な臓器の影響を受けて変化することがあります。爪の変化は隠れた内臓疾患を発見するサインかもしれません。

糖尿病にみられる特徴的な皮膚の疾患もあります

他にも糖尿病に特徴的な皮膚疾患として後天性反応性穿孔性膠原繊維症(ARPC)、脂肪類壊死、糖尿病性浮腫性硬化、Dupuytren拘縮などがあります。Dupuytren拘縮(写真)は手にある手掌腱膜が肥厚して指の曲げ伸ばしに影響を及ぼすことがあります。日常生活にも支障がでるため注射や手術が必要になることがあります。写真は右手のDupuytren拘縮を認め、手が使いにくくなっため肥厚した腱膜・皮膚の切除を行い、皮膚移植を行いました。術後は手の機能も改善し、日常生活にも支障がなくなりました。このように糖尿病などの内科疾患と関連した皮膚の症状も多数あるため、治りにくい皮膚の症状がなどがある場合はかかりつけ医を受診すようにしましょう。 

糖尿病治療薬と皮膚の病気

近年ジペプチジルペプチダーゼ-4(DDP-4)阻害剤による水疱性類天疱瘡との関連が指摘されております。水疱性類天疱瘡とはご高齢の方に発症しやすく、全身に強い痒みを伴う赤みと水疱を生じる疾患です。これは皮膚構造を構築する特定の部分に対して自己抗体が産生されて発症する自己免疫疾患と考えられておりますが、薬剤による水疱性類天疱瘡ではまだ不明な点が多いとされます。DDP-4阻害剤による水疱性類天疱瘡では内服後に出現し、内服を中止すると軽快する、軽症例が比較的多いことが特徴です。水疱性類天疱瘡と似た疾患もあるため診断には採血(血清抗BP180抗体)や皮膚生検を行うことがあります。治療としては内服薬の変更やステロイドの外用、重症な場合にはステロイドの内服や点滴も検討されます。

*参考文献 糖尿病の最新治療 第7巻第4号より引用

文責 形成外科専門医 江草豪

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